インビクタス

クリント・イーストウッド作品をほとんど見たことがなかったんだけど、今回これを見て驚きと共に他の作品も見たいと思った.

ただラグビーのワールドカップひとつを取っても、南アフリカという舞台で行うということだけで、それは立体化される。アパルトヘイト廃止後にネルソン・マンデラが大統領が就任したことで、方向が決まっていた差別のまなざしは歪められてしまった。南アフリカのサッカーチームは黒人が多いが、ラグビーチームは白人が多い。アパルトヘイトの象徴として認識されていたラグビーは、マンデラ就任と共に迷いが生まれる。27年間のあいだ牢の中でマンデラを支えたのがInvictusの詩。

I am the master of my fate
I am the captain of my soul

"Invictus,"
by William Earnest Henley


この映画は淡々としている。ノンフィクション作品の難しさは,史実が持つドラマ性と蓋然性をバランスよく担保しなければならないことだが,それが絶妙な形で行われている。登場人物は歴史的名言ともいえるようなセリフを,自分が色あせた映像の中に生きているかのように,自然に,そっと口にする.また,贅沢なのは,一番大切なシーンに時間をゆっくりとかけ,世界に私たちを着地させてくれる.退屈にならざるを得ない部分を変に派手にするのではなく,ただ,淡々とその時間を伝える.


とにかくいいです.